六部塚
知多郡阿久比村大字阿久比地内(知多郡阿久比町)に六部塚がある。昔当地の庄屋へ六部が来て無礼を働いたので,その庄屋が非常召集の笛を吹いた所,隣村の椋岡の人まで応じて出て来た。そして椋岡の人と挟み討ちして生け捕りにし,首だけ出して生き埋めにした。六部は残念がって椋岡の人を恨み,「椋岡の戸数は将来永久に廿五戸以上には殖やさないぞ」と云って死んだという。(『愛知県伝説集』 p.150)
■解説
六部とは六十六部の略で,本来は全国六十六か所の霊場に一部ずつ納経するために書写された六十六部の『法華経』のことをいったが,のちに,その経を納めて諸国霊場を巡礼する行脚僧のことをさすようになった。殺された六部の呪いによって村が不幸になるという伝説は全国的に分布し,これらを総称して「六部殺し」という。犬山市にも「六部塚」があるが,これは,狐に化かされたことを恥じて切腹した六部を村人が憐れんで建てたものだという(『犬山市史』別巻p.854)。