妻の神

 東春日井郡品野村大字下半田川(瀬戸市)の東部に小祠あり。妻の神と称す。往時此地に男女二人の兄妹ありて,共に頗る美貌なりし。然るに共に夫婦とならん者を求めしも得ず。依て兄妹共に旅行して配偶者を求め,数年を経たりしが,意に適するものを得ざりき。故に已むなく此の地に帰りしに,頗る意に適したるものを見出し,大に喜びて近づき語りしに,此はそも如何に数年前別れて旅行せし兄妹同士なりしかば,大に之を恥じ,遂に発心して往生せりという。今,縁の神として参拝する者多し。(『東春日井郡誌』 p.1369)

解説

 「妻の神」とは道祖神のことである。道祖神は境の神,道の神とされているが,防塞,除災,縁結び,夫婦和合などの神ともされている。祭祀の起源を近親相姦と結び付けて伝えることもあり,この伝説のような兄妹相姦説話は中部地方に多い。